10/24
『ドリミーング・オブ・ホーム&マザー』打海文三の遺作を読了。
作者読みでデビュー作から順に読んでいたが、ついに遺作に到達してしまった。
すでに読んでいた作品は飛ばして、ちょっとした勘違いもあって早めに手を出してしまった。『ぼくの愛したゴウスト』と池上永一『ぼくのキャノン』を勘違いしていた。だから早めに本作に取り掛かることになった。
作者読みをしているといくつかの要素が過去作からやってきていることが分かる。
当然ひとりの人間が書いているから、個々の作品は違えどその土台となる部分は同じだ。表出しているストーリーは異なるが、通底する何かが感じ取れる。
と言っても個人的な力不足もあってそこまで連なるようなメッセージを読み取れているわけではない。
ノンジャンル的な作家だし、メッセージよりも読者が面白いと思うような小説を書くようにしているように思われる。
そんなのは小説家として当たり前なのかもしれないが、分析するよりも面白いが前に出てきしまうのは小説としてきちんと機能しているということだ。
本作においてはメッセージそのものが面白いということもあって、純粋に楽しんでしまった。
もとよりそのつもりなのだけど。
もどって、本作『ドリーミング・オブ・ホーム&マザー』は遺作に相応しいと書きたくはないが集大成的な小説と言えなくもない。
ハードボイルド的な渇きと突然の暴力、微妙な男女関係の機微、パンデミックに『クージョ』のような犬、信頼できない語り手。いろいろと盛りだくさんだ。
一度の読了だけでは勿体ないくらいで、これを書いているいまはまた読みたいなと思ってしまっている。
この小説を解読しないと。