20230921──映画的な凄い酔い

・寝起きがよくなくて腕時計を見ても止まっている。7時間半ほどの睡眠時間らしいが全然そんな感じはしない。ゴースの寝顔を見た。

・匿名ラジオを聴きながら日記を記事にしていた。ラジオの内容、全部すり抜けた。ウロマガメールでウケた。

・なんとなく明日は有給なので過ごし方を考える。映画には行く。あとはそれ以外。

・23日は友達と映画を見るのだけど、小林大吾のライブが大阪であるらしい。ライブの頻度がすこぶる少ないので行ける機会は行っておきたいのだけど、どうしようか。

・『AKIRA』サントラから「Kaneda」が流れてきて、ラセッラーラセッラーラッセラッセラッセラーになった。

・休みのために仕事をもりもり倒したが、締切が近いものを見つけてしまった。無念。

・帰宅。北野武監督作の『アキレスと亀』を見た。う~~~ん、微妙!!!!となった。

・やりたいことは概ね分かるのだけど全体的にベタで、ベタらしさを皮肉っていた『監督・ばんざい!』を思うと素朴すぎる印象を抱いた。

・2023年でなくともアート/芸術をテーマにしてフィクションはたくさんあり、それらとどうしても比較してしまう。漫画『ブルーピリオド』でええやんか、と。本作の場合は天才/才能がテーマではなく個人的な欲望に的を絞った私的な物語だ。北野武の内面を想像するにはいいかもしれないが、あまり好きにはなれなかった。むしろ嫌いかも。

・その最たるものがラストで、芸術家になりたくて生活を放棄し家族を蔑ろにしていた男が最終的に妻に救われる。非常に自分勝手なエゴイストな物語すぎて北野武らしいのかもしれないが腹が立った。北野武の夫婦感は『HANA-BI』なんかを見ても牧歌的で保守的なので、それが行き過ぎると肌に合わなくなる。おまえが救われるんかい!!!!!!!って声に出た。

・芸術家になりたいが既存の芸術家の模倣しか出来ない苦しみ、みたいなものを描いているんだろうけど本人が苦しんでいるようには全く見えない。柳憂怜の無表情な佇まいが逆に作用していて掴みどころがなかった。北野武の映画は観客をキャラクターに感情移入させる仕組みが小さい気がしている。内面を見せないし内面が分からないような登場人物が多く、そこに急に発生する暴力や死のイベントで映画を駆動させている感じがある。だからこそ、その突拍子のなさが良かったりもする。

・あと劇中は子供、青年、老年と分けて描かれるが、青年時代の描写が結構キツかった。美術予備校に通っていてそこで出来た友達とつるむようになるが、その様子が面白くない大学生そのまんまで辟易した。これは『ブルーピリオド』とかを知っているからこそアートをやりたい人間がそんな感じでいいのか?みたいなことを思ってしまうのもある。部分的にはそういう人たちもいただろうし、今もいるので間違ってはないのだけど。

・真知寿その人が、なぜそうなりたいか?の欲望が内から発されたものでなく、家族からの刷り込みでしか無いのがこの物語の救いの無さになる。はずなんだけど、前述した最後の救いがそれを台無しにしている。台無しにしているといえばタイトルだ。「アキレスと亀」のジレンマは無限性に焦点を当てていて、追いつく追いつかないが本質でない。なぜなら体感としてもそういうジレンマが成立しないのは小学生でも分かるので。この「成立しない」を映画内で実現している部分があって、そこはすごくちゃんとしている。芸術家を目指そうと勉強するが結局は「勉強」する前に独学で描いた作品が飾られてしまっている、のはそういうことだろう。けど映画の結末はそこではなく夫婦の話になってしまうので台無しだ~となる。

・目標設定が売れたい、だとしてもそれが抽象的で何らかの賞を取るとかでないものわかりにくい。画商との関係性、他人のアドバイスの意味の無さがまざまざと描かれるのは『Kids Return』の悪い先輩を彷彿とさせ、そういうもっともらしいことを言う人間に気をつけろ!っていう警句なのかもしれない。

・もやもやしたまま家を出た。今敏の『パーフェクトブルー』上映の最終日だったので滑り込みで見に行った。めちゃくちゃ良かった。

・今敏監督作は歯抜けで見ていて本作は未視聴だったけど映画館で見られて良かった。とにかく男性の欲望が醜悪!醜い!ことをどストレートに描いて、現実/非現実の揺さぶりが超絶に上手くて酔った。映画的な凄い酔いだった。なんだこれ~~~~~と一種の興奮状態でも合ってめちゃくちゃスリリングな体験だった。

・男の欲望ってこんなにキモいのだなぁと直視することになるが、それを描くところに露悪さを感じないのも凄い。こういうことをやるとどこかに作者の影が透けて見えてしまうのだけど、しっかりとストーリーとキャラクターを練り上げて映像にしているので自然に感じ取れる。

・もう良いのであえて書くことはない。

・途中、爆発物が出てくるシーンと観客のスマフォが振動し始めたタイミングが一致し、スマフォを慌てて止めようとしたら爆発で本当にビビる人、みたいなシチュエーションが発生してた。

・非現実感を持ち帰りながらビールとかを買って無様に寝た。